不器用な愛を刻む







でも


きっと-----違かったんだ。












「善様…!お帰り、お待ちしていました…!」











そう言って嬉しそうに

自分の帰りを待ってくれていた椿。





寝ていてもいいものを




寝まいと我慢しながら

遅い時間までずっと1人部屋で過ごして自分を待ってくれていた。









「…どうか無理だけは、しないでください…。」









そう言って自分の体を

心配してくれる、その存在に








──いつからか 安堵していたのだ。











…幼い頃から自分の存在を否定され

生きる意味を感じてこなかった。







いつ死んでもおかしくない戦場に
立つことに


何の抵抗も嫌悪もなかった。












(………それで、ようやく分かったんだ。)











そんな自分が



"生きること"を喜んでくれる存在、









自分をただの"人"として



扱ってくれる存在、










その存在を

自分が欲していたこと、





そして現れたその存在に


喜びと嬉しさを感じていること。












「…善様…。」











───嗚呼 きっと









あの時の『生きろ』は










自分にも…


向けていたんだろうと思う。









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