天使の梯子
「だ、だってここから今の職場、ちょっと遠いし」
「じゃあ、引っ越すよ。俺と楓の職場の中間に家を借りてもいいし」
明日にでも不動産屋に行くかなと考える俺に、楓は驚いた顔で俺を見上げてくる。
「暎仁くん、この家気に入ってるんじゃないの?」
たしかにこの家にはもう大分長いこと住んでいるし、楓との思い出もいっぱいあるから気に入ってないわけではない。でも、別にここじゃなくても、もういい。
「ここにずっと住んでたのは、もしかしたら楓がまた戻って来てくれるんじゃないかと思ってたからだよ。だから、もう引っ越してもいい」
楓がいなくなってから、もしかしてまた戻って来てくれるんじゃないかって思ってここに住み続けてた。この家に住み続けていたのは、ただそれだけの理由だ。
俺がそう言うと、楓がちょっと申し訳なさそうな顔をする。