天使の梯子
「いいじゃん、別に。楓の身体で俺が知らないことなんてひとつもないよ」
たしかに、諏佐さんは私よりよっぽど私の身体を知り尽くしている。昨日それを思い知らされた。
だけど、恥ずかしいからそういうことを言わないでほしい。
赤くなる私を笑いながら見ていた諏佐さんが、身体を起こして私に手を伸ばしてくる。
「楓。強情なのもいいけど、そろそろちゃんと聞かせて」
急に真剣になった諏佐さんに、私は視線を泳がせる。
「ちゃんと俺のこと、見てよ」
頬を包まれて顔を固定されて、真剣な瞳でじっと顔を覗きこまれる。
この人は、私が離れた理由を知ったら……軽蔑するんだろうか、驚くだろうか、怒るのだろうか。
受け入れて許してくれるなんてこと、あるんだろうか。
私の意志ではなかったにしろ、この人を裏切ったことには変わりがない。
そして私は、この人を信用しきれなかった。だからなにも話せなかった。
目を伏せた私に、諏佐さんがため息をついた。
「楓、四年前……」
そこで諏佐さんの声を遮るように、インターフォンが鳴った。