続★俺だけの家政婦さん
そしてその1か月後

『恋しくて』の発売から1週間が経った。

「先生!先生います?」

玄関先に担当の小島さんの大きな声が響く。

「どうしたんです?先生は今遅い朝食をとってるけど」

玄関に現れた私に小島さんは

「あっ!栞里さん!実は、『恋しくて』の5万部突破しました!

重版ですよ!」と興奮を抑えられずにいた。

「そうなんですか?と、とりあえず上がってください」

「はい。お邪魔します」


リビングではご飯を食べ終えた野末君が新聞を広げていた。

「野末くん、小島さんが見えたよ」

新聞を畳みながらチラリと小島さんを見ると

「重版ね。聞こえたよ」と淡々と返事をする。

何?この温度差。

「先生うれしくないんですか?このペースでいくと新記録まちがいないです」

鼻息を荒く力説する小島さんに野末くんは

「これに限っては売れるためにかいたわけじゃないからな~。
ちょっと複雑」

チラリと私を見た。

わたしへの気持ちを綴った作品がこんなにも売れると思っていなかっただろう。

それにこれがほぼ実話だって知ってるのはここにいる3人だけ・・いや

須藤先生もいたっけ。

「もう~だから、これはフィクションだって明記してるから、そんなつまらなそうな
顔しないで下さいよ。それにこの本のおかげで今凄く幸せなんじゃないですか~」

小島さんがニヤリと笑った。
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