理想は、朝起きたら隣に。

こそこそと壁を見つめがら向こうを見ないように、それでいて見つからないように逃げる。

……就職してそのまま海外。

その話が本当ならば、彼と自然消滅してそのまま別れた時期と海外へ行った時期が重なる。
慶斗は就職活動に本腰を入れたくて、カフェのバイトを辞めることになったと話していた。だから辞める前にずっと気になっていた私に声をかけてくれたのだと。


でも気まずいまま、慶斗だけ海外へ逃げて私だけ気持ちも残されたようで、胸が痛い。
こんな事実、知りたくなかった。
会いたくなんてなかったよ。

到着したパウダールームの正面の鏡には泣き出しそうな情けない私の顔が映っている。足もさっきより痛くなった気がする。

(帰ろう)

もういい。

帰ってしまおう。

皆には止められるかもしれないから電車の中でお詫びのメールをして帰ろう。
そう思ってそのまま入口へ向かった。
勢いよくドアを開けた瞬間、『わっ』と驚く声がする。

「あぶない。もう少しでぶつかるところだったあ」
「ごめんなさ――って優衣」

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