⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
その日花岡君はうちに泊まり、次の日の朝早々に、2人は発つことになった。

「本当に…何て言ったらいいか…」
「ありがとうございました」

「ま、元気でな」
「ちゃんと病院行くんですよ」

別れの挨拶をしていたところに、幼稚園の支度を急いで終えたらしいフユキが、タタッと走ってきた。
「フユちゃん…」


フユキは、いつもそうしていたように、ギュッと彼女のお腹に抱きついた。

「おねえちゃん……トオクにいっちゃうの?フユキともう……あえないの?……モモちゃんも…」

(モモちゃん?)
(お腹のアカチャンのコトです。フユちゃん、女の子だからって、勝手にそう呼んでたの)
燈子が俺に耳打ちする。


いつもフテブテしいフユキが、今日はやけに寂しげだ。

毎晩一緒に寝かせてたし、なついてたからな…

ホンの少し、胸が痛い。

と、マツコはお腹のそばにあるフユキの頭をギュッと抱きしめた。

「おねえちゃんね、モモちゃん生まれたら…
すぐフユちゃんに手紙書くよ。
遠いとこだからね。すぐには無理かもしれないけど……パパとママが良いってったら、きっとフユキに会いに行くから」

「本当?とーさん、いい?」
目を輝かせた小さな彼に、俺は小さく頷いた。


「じゃ、約束」

フユキは彼女に向かって、小さな小指を差し出した。


小指どおしが絡まり、切れて。


マツコが去った。
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