「ただ、隣に居たいだけ。」

「…離婚、する気だったんだって。」


幼い頃の〝母〟と〝父〟を知ってる未空は、信じられない、、と一言だけ呟いた。

家に居るときと、外に居るときは違って
〝人当たりの良い人〟を演じてたから。

外では、一緒に〝楽しく遊んでいる〟母親を。そして〝家族のために仕事を頑張っている〟父親を、二人は演じていた。

家では、話しもしたりしないのに。

でも、子供ながらに〝外〟にいる〝仲のいい両親〟が本当なんだって信じたかった。


「二人とも、違う人と付き合ってる。」

聞きたくなかったという様子で
首を横に振りながら涙をこぼす未空。


転校先に、母親の〝カレシ〟が居るなんて___。

〝大事な人〟ていうのは
居なくなるんだって思ったよ___。


「……未空も、俺を置いていく?」


消し去りたい〝あの日〟と、溢れ出る涙のせいで、ぐちゃぐちゃになった顔で、無意識に弱音を吐いてしまった。

言ってはいけないことを____。


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