それを愛と呼ぶのなら
こういう生き物に関心を持つことなく育ってきた私は、パッと見たくらいじゃ名前を挙げることができない。

ううん、名前がわかったとしてもピンとこないかも。


昔、小学校の校外学習か何かで水族館に行ったことがあるけど、班の子の後ろを気怠げについていくだけで、水槽の中の生物に注視することはなかった。

……我ながら可愛くないガキだったわね。


「いってらっしゃいませー」


入口で半券を渡し、中に入る。

そこから続く水の世界に、私はただただ圧倒された。




海遊館を出る頃、太陽は既に傾き始めていた。

一度背伸びをして、長い息を吐き出す。


正直、時間を潰すためだけに選んだ場所だったけど、そんな風に思ってたのがおこがましいほど素敵な空間だった。

水の中を自由に泳ぐ魚を見てると、心が安らいで。

あまりに心穏やかになって……つい、水槽に手をついて、問うた。「あなた達は自由?」と。
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