それを愛と呼ぶのなら
水槽という限られたスペースで、それでも好きなように泳ぎ回ることのできるあなた達は、自由を感じるの、と。


答えなんて返ってくるはずない。そんなの、発達途上の小さな子どもでもわかること。

だけど私は求めてしまったの。彼等からの声を。言葉を。

それほど真っ暗な迷路の中にいるのだと、改めて気づかされてしまった。



オレンジ色に染まるマンションを見上げた時、ベランダに衣服が干されていることに気付く。

朝、私は洗濯をしなかった。

だとすれば……。


「……」


大丈夫。普通にしていよう。

真尋だってきっと、器用にいつも通りを貫くだろうから。


偽ることには十分慣れているはずでしょ。

ねぇ、葵?


──ガチャ……

玄関の扉を開けると、ちょうど真尋がお風呂場から出てきたところだった。


「……よ。おかえり」

「……うん、ただいま」
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