ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

かくして否応なしに春海さんに手伝ってもらう事態になってしまった。彼はスチールラックをさくっと組み立ててしまい、次はローテーブルに手をつけてそれもあっという間に形にしてしまった。



「やぁもうほんとに申し訳ない……ありがとうございます。お茶淹れますね」

「あぁ、いいのに」

「駄目です。してもらってばっかりというのは……組み立てのお礼もちゃんとしますから」

「いいって。俺がやりたいからやったんだよ」

「駄目ですってば」



さすがにもう邪険にもできなくて、私は買い揃えたばかりのグラスにペットボトルの緑茶を注いで出した。冷蔵庫はまだ届いていない。お茶は少しぬるくなってしまっているけど……まぁ、いいかな?

春の陽気で少しだけ肌が汗ばむ。

春海さんも少し汗をかいている。今日は紺色のポロシャツ姿の彼が、ぐっと緑茶を飲み干すのを、その上下する喉をじっと見ていた。そして視線はいつしか全身へ。

すらっとして見えるのに、ポロシャツの袖から伸びる腕は意外と逞しい。何かスポーツでもしてたのかな〜なんて考えながら、でもあんまり詮索するのもなんだし……と思って考えるだけに留まる。

一瞬だけ、昨日落ちてきた彼を抱きとめた瞬間の感覚が蘇った。





< 18 / 72 >

この作品をシェア

pagetop