ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

「切ないこと言わないでよ。段々意地悪んなってきたね?っていうか……その“彼氏”はどうしたの。今日デートって言ってたのに」



ホテルは?と冗談めかして訊いてくるから本気でイラッとして、無視することにした。しばらく黙っていると春海さんは隣からじっと見つめてきて、「そっかそっかー」と少し嬉しそうに笑う。



「ドタキャンされたかー。かわいそー」

「……最低ですね!」

「そんなカリカリしないで。はい」



ぱっと手渡されたものを反射的に受け取った。それは手の中でまだひんやりと冷たい。缶チューハイだった。



「それ、梅サワーね。レモンとリンゴもあるけど、そっちのほうがいい?」

「あ、いえ……梅、好きです。もらっていいんですか?」

「うん、あげる」



そう言って彼は私とは反対隣に置いたレジ袋の中から自分の分の缶を取り出す。彼が選んだのはビールだった。彼はプルタブを開けて、腕を伸ばしてきた。

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