ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

言いながら彼はバツが悪そうに眉根を寄せて、まだ火を点けたばっかりだったらしいタバコを携帯灰皿にぐりぐりと押し付けた。白いシャツに黒のカーディガンを羽織っていた彼は、いつも以上に爽やか好青年に見えた。だからタバコは余計に不似合いに見えて。



「タバコ吸うこと、隠したかったんですか?」

「……デート」

「なんで隠すんです」



デートはどうしたのかと聞きたがる彼を無視して、会話を無理やり自分のペースに乗せる。私はまだバツが悪そうにしている彼の隣に腰掛ける。彼は自然と隣のスペースを空けた。



「いや……タバコ嫌かなぁと思って」

「……私が?」

「うん。タバコ吸うような男は嫌いかなって。そうでもない?」

「まぁまぁ嫌いですけど……私のこと気にしたって仕方ないじゃないですか。彼氏いるって何度も言ってるでしょう?」



言ってから自分でチクりと胸が痛む。何度も私が“彼氏だ”と主張しているだけの彼氏。春海さんは当たり前の疑問をごく自然に投げかけてくる。

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