ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

隣でせつなそうにぽつりとつぶやく春海さんをよそに、缶に口をつけたまま視線を上にした。この公園は少し前まで満開の桜が生い茂っていたけれど、今はすっかり青々とした葉っぱで満たされている。



「……もうすぐ五月ですねぇ」



特に意味もなくそうつぶやくと、春海さんは同じトーンで“そうだねぇ”と言った。



「時間が経つの早いなぁ」

「もうすぐ引っ越してきて一か月くらいか。一人暮らしは慣れた?」

「管理人さんのセクハラ以外は」

「ははっ」

「笑うところだと思ってるんですか? ドン引きです」

「やばいなー、そういうところもかわいく見える。大好き」

「タバコ吸う人は嫌い」

「もうやめるもんねー」



え、と思ってつい彼のほうを向いてしまった。彼は意外そうに目を丸くして私を見ている。……やめる?

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