ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。

給湯器の電源は入れたのに、どうして? どの場で裸のまま考えこむけれど、答えはさっぱりわからない。いつもこれでお湯になるのに……。手のひらがどんどん冷えていく。一体なんなの、と、もうシャワーを浴びることすら面倒になってきたとき、浴室の外に“ピーンポーン”と間延びしたインターフォンの音がした。



「……え」



不意を突かれて慌てる。一人暮らしを始めてから、入浴中に誰かがやってきたのはこれが初めてだった。宅配か何か? でも何も注文してないと思うけど……。じっと息を凝らして待つ。水はやっぱりお湯にならない。シャワーをすぐに止めなかったのは、できればやり過ごしたかったからだ。今は誰に会うのも億劫で。

“ピーンポーン”と二回目のインターフォン。



「……」



その後三回目が鳴って、これは出ないといけないやつだと観念した私はシャワーを止めた。浴室を出て濡れた手と足を雑に拭いて、脱ぎちらかしていた衣類を最低限身にまとう。下着と、ブラウスとスカート。ストッキングまで穿きなおす時間はない。その間にも四回目のインターフォン。誰だろう。この人もなかなか諦めないな!
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