ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。


「起きてるかなーと思って部屋覗いたら、かわいい顔して眠ってるからさ。思わず一緒に寝ちゃったよ」

「何時に来たんですか?」

「朝の、六時」

「またなんでそんな早くに……」

「昼前には出かけないといけないから。早く会いたくなっちゃって」



そう言いながらベッドの中、ぎゅっと私の体を抱きしめて首筋に頬擦りをしてくる。



「はぁ癒される……」

「……今日も眠そうですね?」

「うん……いつだって眠い」

「夜更かししてるんですか?」

「まぁまぁ」

「一体何を……」

「ひなちゃーん」



尋ねようとしたのに甘えた声で有耶無耶にされた。朝方ベッドの中に忍び込んだという春海さんは黒い薄手のVネックシャツを着ている。下は布団の中に隠れていてわからない。

いつも通りの私服だけど、抱きしめられている至近距離から香るボディーソープの匂いで、数時間以内にお風呂に入ってからここにやってきたのだとわかる。



「……」



私は特に抵抗もせず、抱き着いてくる彼の背中に腕を回してさする。二人で抱き合うにはこのベッドは狭い。だけど、こうして人に抱きしめてもらえるとすごく安心するのだと、私は最近初めて知った。

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