ベタベタに甘やかされるから何事かと思ったら、罠でした。
*
あれから数日。父とは会っていない。新田さんも、もう総務部へはやってこない。それで私の生活が大きく変わったのかといえばそんなこともない。引き続き、一人暮らしを満喫している。
変わったことは一つだけ。
「ん……」
休日の朝。閉じたカーテンの隙間からこぼれる光に目を覚ます。寝返りを打とうにもどうしてか身動きが取れず、自分を拘束するものの正体を確かめる。自分の体をしっかりとホールドしているのは逞しい腕。呆れて息をつく。目の前に、寝息をたてている春海さんがいる。
「……」
整った顔立ち。長いまつ毛。健やかな寝息。
私はそっと手を伸ばして、その白く綺麗な頬をつねった。
「い゛っ……!」
「狸寝入りはやめてください。おはようございます、春海さん。……また合鍵を使いましたね?」
寝たフリがバレた春海さんは「ははっ」と気まずそうに笑った。合鍵を預けるようになってからというもの春海さんは、よく私のベッドに潜り込んできて一緒に眠るようになった。ねだられて、別にいいかと渡してしまったけれど、良かったんだろうか……。今のところは、気づけば抱きしめられているだけでそれ以上のことはされていない……はず、だけど。