唯一の愛をキミに【完】
面倒くさい…。


女は何を勘違いしているのか勝手に一緒に帰ろうとしている。


やんわりと絡め取られたら腕を離そうとするけど気付きもしない。勘弁してくれよ…。


「上原くん?」


駅前の大通り、人も大勢いて賑わっているこの場所なのに透き通るような彼女の声がやけに響いた。


「唯ちゃん…」


声の方に目を向けると唯ちゃんが俺たちを見つめていた。


唯ちゃんはこの前会ったときと同じようにTシャツとジーンズのシンプルな組み合わせ。


それを見てなぜ気付かなかったのか、自分の馬鹿さ加減を恨んだ。


俺たちが今まで合コンをしていた居酒屋は唯ちゃんのバイト先でもある喫茶店と近かった。


「哲、知り合い?」


大志にまだ彼女のことは伝えてない上に学部も違う唯ちゃんのことを大志が疑問に思うのは当たり前で。


「哲くん、ダァレ?知ってる子ぉ?」


俺の隣にいる女は甘ったるい声を出しながら、見定めるかのように唯ちゃんを上から下まで睨みつけるように見つめたあと鼻で笑った。
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