花盗人も罪になる
「やっぱりやめとく。ちょっと飲みすぎたみたい」

「そうなの? 紫恵も綾乃も行かないんじゃつまらないわね。私もやっぱり帰ろうかな?」

圭がそう言うと、春菜は少し不服そうにグラスのカクテルを飲み干した。

「何よ圭、私と二人じゃ不満?」

「そんなこと言ってないでしょ」

「じゃあ行こうよ、二次会。独身同士、たまには面倒なこと忘れてパーッとさ」

「まぁ……たまにはいいか……。じゃあ、やっぱり行く」

「よし、今日はとことん飲もう!!」

レストランではあんなにピリピリしていたのに、圭と春菜は二人で二次会に参加してとことん飲むそうだ。

友達だから言いにくいこともあるけれど、逆に友達だからこそハッキリ言えることもあるのだろう。


それから春菜と綾乃が別のグループの席に合流して、圭がお手洗いに行くと席を立った。

紫恵はスマホをバッグから取り出して、あと30分くらいで終わるからその頃に迎えに来て欲しいと父にメールを送った。

スマホをバッグにしまい、少し火照る頬を両手で押さえ頬杖をついてぼんやりしていると、誰かが紫恵の肩を叩いた。

「よう紫恵、久しぶり。元気か?」

「あ……松山(まつやま)くん……久しぶり」

紫恵が高校時代に半年ほど付き合っていた元カレ、松山だ。

いつも『松山くん』と呼んでいたから、下の名前はよく覚えていない。

付き合うきっかけになったのは松山からの告白だったが、別れるきっかけはなんだっただろう?


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