花盗人も罪になる
それから二人で入浴を済ませベッドに入った。

逸樹は紫恵を腕枕して、紫恵が気になっていたこれまでのことを順を追って話した。

残業が終わった後、会社帰りに相談に乗って欲しいと円に言われ仕方なくカフェに入ったことや、その相談の内容。

希望を公園へ連れていった時に偶然香織と出会い、一緒にりぃの散歩をしたことや、香織から聞いた遠距離恋愛中の彼氏の話。

そして大阪へ出張している時に、先輩たちにいかがわしい店に連れ込まれそうになったこと。

店先で客引きをしていた若い女性に、腕に抱きつかれたこと。

必死で断って一足先に宿泊先のホテルへ戻ったこと。

そんな先輩たちがいると話すと、この先また紫恵を不安にさせてしまうのではないかと思い言い出せなかったこと。

ことの真相を知った紫恵は、少しばつの悪そうな顔をしていた。

「若くてかわいい女の子がすごいサービスしてくれるって……。いっくんはその店に入りたいとは思わなかったの?」

紫恵がためらいがちに尋ねると、逸樹は紫恵を抱きしめた。

「俺がそんなことしたいのはしーちゃんだけ。他の子には触れたくもないし触れられたくもない」

キッパリと言い切る逸樹に、紫恵は嬉しそうに笑ってキスをした。

「そういういっくんだから好き」

「俺もしーちゃんが好き」

逸樹は満足そうに笑って、紫恵を強く抱きしめた。


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