花盗人も罪になる
「事故にあっても、直接連絡がいくのは家族だけなんだな。香織が俺の家族ならいいのにって思った」

「え……?」

大輔は真剣な目で香織の目をじっと見た。

「転勤が決まった時は、俺の仕事の都合で香織に無理させたくなかったから何も言えなかったけど……会えないと寂しくて不安だった」

大輔は香織を抱き寄せて、額を香織の額にくっつけた。

「香織と離れてるの、そろそろ限界だ」

「私も……大輔と一緒にいたいよ……」

どちらからともなく、触れ合うだけの短いキスをした。

大輔は照れくさそうに笑う香織を包み込むように抱きしめた。

「俺は毎日、香織の待つ家に帰りたい。香織、一生大事にするから、俺の奥さんになってください」

大輔の低く優しい声が香織の胸をジンと熱くした。

「私でいいの……?」

大輔の大きな手が、ためらいがちに尋ねた香織の髪を優しく撫でる。

「俺は香織がいいんだ」

香織の目からポロリと一粒涙がこぼれ落ちた。

溢れる嬉し涙が香織の頬を伝う。

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします……」

「そんなに泣くなよ……」

「だって……嬉しい……」

大輔はあとからあとからこぼれる香織の涙を親指で優しく拭って、涙で濡れた頬に口付けた。

「香織、愛してる。ずっと一緒に生きていこうな」

「うん……」

離れていた時間を埋めるように抱きしめ合ってキスをした。

香織は大輔の温かい腕の中で、大切な人がそばにいることの幸せをかみしめた。




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