花盗人も罪になる
「その節はどうもお世話になりました」

「いえ、たいしたことは……。あのー……今日はののちゃん一緒じゃないんですか?」

「ええ、今日はママが仕事お休みなので」

紫恵と希望は親子ではないようだが、だったら一体どういった関係なんだろうと香織は首をかしげた。

そういえば逸樹は希望のことを姪だと言っていた。

香織は不意に、希望を愛しそうに見つめる逸樹の優しい眼差しを思い出す。

職場を離れた場所で他の上司に会うのは避けたいと思うのに、逸樹と散歩をした時はなんだか心地よくて、もう少し一緒にいたいような気がした。

また明日、りぃを連れて公園に行けば会えるだろうか。



それから香織は羊毛フェルトでりぃを作った。

また希望に会えたらプレゼントしようと思っている。

紫恵の教え方はとても分かりやすくて、ふんわりと柔らかな雰囲気が愛らしいとても素敵な人だと香織は思った。

家に帰ってから母に聞いたところによると、紫恵は結婚しているが子供がいないそうで、優しい夫と夫婦二人きりの生活なんだそうだ。

見たところ歳は自分と同じくらいか少し上といったところか。

まだ若いし、子供を作ることは焦らずに夫婦二人きりの生活を楽しんでいるのかもしれない。


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