花盗人も罪になる
早くに結婚して子供を産んだ友達は、子供はかわいいが子育てをしていると自分の自由になる時間がないとよくぼやいている。

時には育児に協力的でない夫に対する不満や、家庭に縛られて社会から取り残される不安を口にすることもある。

そんな話を聞かされるたび、独身の香織はいつも、彼女たちの気持ちがよく理解できないでいた。

自らが望んで好きな人と結婚して子供を産んだはずなのに、何がそんなに不満なのだろう?

結婚したら子供を産むものだと漠然と思っていたけれど、不満ばかりの結婚生活にならないためには、しばらく夫婦二人きりの生活を楽しんでから子供を産むというのも悪くないなと香織は思った。



その日も大輔からの連絡はなかった。

連絡が途絶えてもうどれくらいになるだろう?

何度となくメールや電話をしてみても、なんの応答もない。

こうなると、大輔がどうしているのかを知るには直接会いに行くしかない。

だけどもし会えたとしても、別の女性と一緒にいたり、もう別れようと言われるのではと思うと、会いに行く勇気が香織にはなかった。

遠距離になる前も、仕事で忙しい大輔とはなかなかゆっくりと会えなかった。

それでもその頃はなんとか時間をやりくりして会う時間を作ってくれていたのに、物理的に離れてしまうと次第に愛情が冷めてしまったのかもしれない。




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