花盗人も罪になる
逸樹は急いで玄関のドアを開けた。

タイミング悪く、心咲が希望を連れてやって来た。

「いっくん!」

希望は久しぶりに会う逸樹に嬉しそうに飛び付いた。

「あら? 紫恵はもう出掛けたの?」

心咲が希望の荷物を逸樹に渡しながら尋ねた。

「はい、たった今……。そこで会いませんでしたか?」

「会ってないけど……。実家に寄るって言ってたから、ついでにこれ届けてもらう約束してたのに。忘れてたのかしら?」

心咲は写真館の物と思われる大きな紙袋を持っている。

「ののちゃんの写真ですか?」

「そう。七五三の写真ね。シーズンになると予約取りにくいって聞いたから、この間休みの日に希望と一緒に写真館に行って撮ってもらったのよ」

普段仕事で忙しくてなかなか一緒にいられなくても、こういうところはやっぱり母親だ。

ほとんど毎日一緒にいても、これは希望の親ではない自分たちの役目じゃない。

「良かったら僕が届けますよ。出張のお土産も渡したいし……」

「そう? じゃあお願いしようかな」

写真館の紙袋を逸樹に手渡すと、心咲は腕時計を見た。

「もうこんな時間! それじゃ逸樹くん、4時頃には迎えに来られると思うから。よろしくお願いします」

「わかりました」

「希望、ママもうお仕事に行くけど、逸樹くんの言うことちゃんと聞いて、お利口にしてるのよ」

心咲が頭を撫でると、希望はニコニコ笑って手を振った。

「はーい! ママ、行ってらっしゃい!」

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

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