花盗人も罪になる
ほんのしばらくの間でも、離れている時はあんなに会いたいと思っていたはずなのに。

紫恵が不安がっていたことも、意地を張っても何も解決しないことも、頭ではわかっている。

今夜は実家に泊まると紫恵は言っていた。

自分が言った言葉のせいでヤケを起こした紫恵が、本当に他の誰かと過ちをおかしてしまったら……。

きっと紫恵のことも、自分のことも許せないだろう。

逸樹は心咲が希望を迎えに来たら紫恵の実家へ行って、今夜は紫恵を連れて帰りきちんと話をしようと決心した。


「いっくん、のの公園行きたい」

希望の言葉で逸樹は我に返る。

「ああ……うん、いい天気だし行こうか」

「かおちゃんとりぃちゃんに会えるかな」

「……どうだろうね」

希望は純粋に香織とりぃに会いたがっているけれど、逸樹にとっては部下の香織と休日に会うのは複雑な気持ちだ。

香織との間に紫恵が不安がるようなことは一切ない。

しかし公園で会ったと伝えても伝えなくても、紫恵はいい気がしないだろう。

だけど楽しみにしている希望に、もうあの公園に行くのはやめようとは言いづらい。

香織に下心があるとは思えないが、今日はなんとなく顔を合わせたくないと思いながら、逸樹は希望の手を引いて公園に向かった。



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