そして浅き夢を見る
「平安時代はさ、奥さん何人いても良かったわけでしょ?だからあんたも平安時代に住む方が向いてるんじゃない?」

「うーん、でもさ、私別に奥さんになりたかったわけじゃないんだ。ただ、あの人の特別でいたかったの。」

あの人との思い出が頭の中で木霊している。

溜め息とともに池をみるともなく見つめた。

その時、ふと私の真後ろに誰かの気配を感じた。

あっ、と思った時には時既に遅し。

私は深緑の水にまっ逆さまに落ちた。

彼女の悲鳴が聞こえるが叫ぶくらいなら助けろよ。

ん?待てよ。

この池やけに深くはないかい??

なんだか沈んで行くのだが。

もがいてもあがいても沈むんだが。

職員やら野次馬やらが集まってきたが見てるなら助けろよ。

ああもうだめだ。

これ死ぬやつや。

こんなことならあの時泣いてでも別れなきゃ良かったなあーあ。

深い深い水の底に堕ちていく。

この池底無しか!?


全く息苦しくないのはもう死んでるからか。

目の前はただ深緑のみ。

魚もいなければ水草もない。

これ多分地球の反対側行ける!

というくらいの時間は経ったと思う頃鈍い音と共に私は硬い床に着地した。

尻から

非常に痛いが今はそんなことよりなぜ水に落ちて床に着地したという前代未聞の事態について考えなければならない。

....ナゼデショウ?

落ち着いて考えてみよう。

身体は濡れてる。

ビショビショだ。

目の前は真っ暗

見上げても真っ暗

ドウナッテルノデショウカ?

にしてもやけに狭いな。

天井も低い。

少し手を伸ばすと籠のような物体に触れた。

手繰り寄せて触ってみる。

どうやら服が入ってるようだ。

中を開けたいが狭くて無理。

そもそもここ開かないの?

方々をガタガタやっているうちにガラリと壁が外れ私は外に転がり出た。

やけに明るい日差しが眩しくて場所の特定が出来ない。
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