憑代の柩
「私は、身代わりの身代わりなんですね」

 ぼそりと呟く。

 使い捨てもいいとこだな、と思ったのだ。

 麻紀たちは先に部屋を出た。

 残った私は、ソファの背に腰を預け、衛の顔を見ないまま言った。

「本田さん、子どもの頃のあづささんの写真、見たそうです 

 いや、あづささんのかはわかりませんけどね」

 衛は腕を組み、火の無い暖炉を見ていた。

「元からあの顔だったのなら、彼女は、佐野あづささんではなかったことになります。

 別人がその名を語っていた。

 でも、写真が他人のものの可能性はあります。

 その場合、貴方の家庭教師の先生のものの可能性が高いです。

 彼女はどうして、それを手に入れたんでしょう。

 そして、まったく違う地方に住む大学教授の娘だった佐野あづささんが、何故、顔を変えてまで、貴方に近づこうとしたのか。

 金目当てなら、別に遠く離れた貴方でなくてもいい。

 まあ、その顔ですから、何処かで出逢って、見初めて、貴方のことを調べ上げたとも考えられますが」

 そこで私は言葉を止めた。

「あんまり興味なさそうですね」
とその横顔を見る。
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