憑代の柩
「秋川の会社もその後、倒産寸前に追い込まれたが、何度か融資を受けて、持ちこたえた。

 が、結局、倒れてしまってね。

 秋川家の人間は失意のうちに、亡くなり、奏はまた一人、取り残された。

 そこから、ぷっつり消息が途絶えている」

「本当に?」

 そう促すと、衛は再び、口を開いた。

「うちに訪ねてきた。
 姉を捜してやってきたんだが、もうそのときには、馨は父親とともに、渓流に転落したあとだった。

 応対したのは、僕の母だ。

 奏に馨は死んだと告げ、言わなくてもいいのに、彼女を売女だと罵った」

「何故です?」

「……要は病院の金を横領していた。
 倒産しかけの秋川の会社を援助していたのは要だ。

 馨は、せめて妹だけは、幸せに暮らして欲しいと願っていたから、それでだと言ってたが。

 いや、馨を自分に縛るためだろう。
 援助さえ、馨が望んだことじゃなかった」
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