憑代の柩
 立ち上がり、そこまで行った。

 自分にはわからない何かの葉っぱが幾つも覗いている。

 後ろに立つ本田が言った。

「僕ね、本当は、あづさの顔が整形じゃないかと言われたとき、そうじゃないかと思ったんです。

 だって――

 子どものときの写真にあったこめかみのホクロがなくなってたから」

 そう、と私は言う。

 塀を越えて、涼やかな風が此処まで届く。

 本田と仲良く庭仕事をしているあづさの幻が見えた。

 見たこともないはずの二十一歳の彼女の姿が。

 振り返ると、俯いたまま、本田は地面を見ていた。

 そっとその肩を抱く。

 しばらくして、彼は笑い出した。

「なんか……おかしいですよ、これ。

 僕は慰められるような立場じゃない。

 僕には何も何も止められなかったんだから。

 気づいていたんです。

 彼女が何かよくないことを考えていることに。

 でも、僕は――」
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