憑代の柩
 そこで、亜衣は背後にまた、人の気配があることに気づいた。

 振り返ると、まだ私服のままの御剣衛がそこに居た。

 こんな間近で見るのは初めてだったが、さすがにときめくような状況ではない。

 太った男に押さえ込まれた着物姿の女を見、

「……母さん」
と呟いている。

 そういえば、やつれてはいるが、細面のその顔は、御剣衛によく似ていた。
 


< 334 / 383 >

この作品をシェア

pagetop