憑代の柩
 そっと馨の細い白い指に己れの指を絡める。

 あのときのように。

 何もかも忘れてそこに居てくれるのなら、それもいいかもしれない。

 手を離し、戻って来た要に言った。

「いいんじゃないか?

 この女を利用して、犯人をおびき出そう」

 要が窺うようにこちらを見ていた。

 彼にもきっと、本当は、わかっていた。

 一目見て、自分が彼女が誰なのかわかることを――。

 やがて、馨の顔の包帯が解かれた。

 開いた窓から風が入り込んで来た。

 カーテンが揺れ、何度か瞼を震わせたあと、彼女の瞳がこちらを見る。

 側に立つ自分は、思わず、身構えるように腕を組む。

「以上、僕の言っていることが理解できたのなら、見てもいいぞ、お前の顔」
< 362 / 383 >

この作品をシェア

pagetop