憑代の柩
「でもまあ、悪意のない犯人っていうのも居るからわからないですけどね。

 自分が正しいと思って、犯罪を犯している場合、疾しさもないから、胡散臭くは感じないかも」

「お前はどうだ」
「え?」

「お前は人を殺しても、自分が悪くないと思えば、罪の意識は感じないのか?」

「……感じると思いますよ、たぶん」

 視界に窓が入った。

 高台に立つ此処からの眺めはとても好きだ。

 ふと、要の手が髪に触れた。

 またあの懐かしい匂いがする。

「髪の長さもちょうど良くてよかったな」

「そうですね。
 こっちが長かったら切ればいいけど、短かったら、めんどくさいことになってましたよね」

「あづさの髪はパーマをあてていたようだが」

「あてていたって今どきの人が言いますかね?」

「私はおばあちゃんっ子だったんでな」

「先生」

「ん?」

「ああいや、なんでもないです」

 病院関係の匂いに懐かしさを感じる話をしようとして、なんとなくやめた。 
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