俺様上司と身代わり恋愛!?
ネチネチと言われ、頭にもきたけど、〝貼り紙は外に貼るべきでしょう〟ってムキになって反論しなかった課長を、心の底からエライなと思った。
十分もすれば動かすって話だったから、とりあえず安心して胸を撫で下ろす。
よかったですね、なんて話をして、さっきまでの重たい雰囲気も姿を消したころ……不意に「茅野」と呼ばれた。
「はい」
白い蛍光灯が照らすエレベーター内。
なんだろう、と思いながら見ると、課長は扉の方を向いたまましばらく黙っていた。
その横顔をただ眺め、言葉を待っていると。
「金曜日のことは、悪かった。忘れてくれ」
静かに、そう言われた。
感情のこもっていない声に、時間が止まったような錯覚におちいり、頭のなかが真っ白になる。
「金曜日のことって……」と、無意識にもれた声が、拾ってもらえないままポトリと床に落ちる。
見つめる先で、課長は未だ前を向いたままで……私にこれ以上なにかを言う気はないようだった。
ショックのあまりか、ドクドクと心臓が震える。
課長が言っているのは、金曜日の夜のこと……だろうか。
『その気になってもいいなら話も別だけど』って言った課長に、『なってもいいです』って答えて、それで、課長の部屋に行って触れ合ったことを忘れろって……そういうこと?
だんだんと動き始めた頭が、ようやく課長の言葉を理解し始める。
でも、どういうことかをわかった途端、なんでって疑問がすぐに頭のなかを覆い尽くした。
課長に告げられた言葉が胸の真ん中に突き刺さり、そこから痛みがじわりと広がる。
〝なんで〟って、言おうとして口をはくはくと動かすのに、疑問は声にはならなくて……どうしていいのかわからずに、痛む胸の前で手をぎゅっと握りしめうつむく。