俺様上司と身代わり恋愛!?
課長は変わらず、私には視線をくれない。言葉もない。
シン……としたエレベーター内の静けさが、悲しかった。
『金曜日のことは、悪かった。忘れてくれ』
課長が言った言葉が耳の奥で何度も繰り返される。
それをただ聞いていることしかできなかったけれど……次第に、ああ、そうか……と、どういう意味なのかを納得し始めた。
金曜の夜。課長は私を好きだとは言わなかった。
それが、答えなんだろう。
ただ、雰囲気に流されてああいうことになっただけで、あの行為に意味はないって。
だから、お互い忘れて、今まで通り上司と部下って関係を続けるための区切りとして、謝ってくれたのかもしれない。
私だって、流されやすいし、気持ちはよくわかる。
ひどいことされたのに、雰囲気に流されて許して関係をズルズル続けちゃうなんて何度もあったし。
伸介がヨリを戻そうって言ってきたときだって、課長に言われた言葉が頭を過らなかったら、もしかしたら許してしまっていたのかもしれないし。
その場の雰囲気がどれだけ大きく怖いものかはよくわかってるし、とっくに体験済みだ。
だから……わかる。仕方ないことだって。
……でも。
いつもだったら……今までの元彼が相手だったら〝わかった〟って笑顔を返すのに、そうする気には到底なれなくて。
バッと勢いよく顔を上げて、課長を見た。