俺様上司と身代わり恋愛!?


印鑑票できちんと印鑑を照らし合わせて、それを融資課に持って行って。

それから営業担当に、共通印鑑にしてもらうための書類を渡したりして午後の業務を終えたのは、時計が十九時を回ったときだった。

新入社員は、最初の数ヶ月は定時で帰すのが暗黙のルールだから、高橋さんと今野さんは十七時半に帰らせた。

今日は日中、忙しくなかった。
他の社員も溜まっていた仕事もなかったようで、十八時過ぎ頃からぱらぱらと帰りだして、気付けば預金課に残っているのは私と課長だけだった。

私も帰ろうとすれば帰れたけど、コーチャーの日記に、今日高橋さんに教えた事故届の事とか引っかかっていた部分なんかを細かく書いて確認していたら、いつの間にか取り残されていて……。

離れ小島に座る課長をそろりと振り返った。

「……課長、もしかしてもう帰れる状態でした?」

まさか私待ちだったらどうしよう。
そんな風に思いながら聞くと、課長は開いていたノートパソコンをぱしんと閉めて帰り支度を始める。

「二十分くらい前からおまえ待ち」
「……すみません」

最後に課を出るのは課長でなければならないという規則は、もうずっと続いている事だし、責任ある立場の人が最後まで残るのは納得はいく。

けれど、今回のように、課長が先に仕事を終えてしまった場合やたら気まずくなる平社員の気持ちも考えて欲しいと思いながら廊下に出ると。

「忘れ物、ないな」

そう聞きながら、課長が電気を消して、預金課への出入り口にある、腰の高さまでしかないドアに鍵を掛けた。

ドアというより、ゲートに近い。


< 33 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop