俺様上司と身代わり恋愛!?
「ちゃんとした見合いじゃないにしても、その席に替え玉よこすなんて、いくら早乙女不動産の社長令嬢だとしても勝手すぎるだろ」
呆れた顔で言う課長が、座っている椅子の背もたれに、身体をずらして片肘を置く。
「私に言われても」と、ははって笑いながら首を傾げると、厳しい視線に貫かれた。
「共犯だろ、共犯。グロスだかなんだか知らねぇけど、そんなもん一本で釣られやがって」
「でもこれ、ただのグロスじゃないんですよ。世の女性がみんな欲しがってる代物ですから。
多分、新品の状態でオークションにかければ5000円は超える……」
「定価は?」
「……3240円」
「3240円の替え玉寄こされるとは随分舐められたもんだな」
替え玉を寄こされたことが余程気に入らないのだろうか……。
ふてぶてしい態度で言う課長に、不思議になりながら首を傾げた。
「桐崎課長、そんなにお見合い楽しみにしてたんですか?」
お見合いに替え玉を用意されたことは、確かにプライドに触ったかもしれない。
そこまで課長を知っているわけじゃないけど、低いか高いかでいったら後者かなとは思う。
上司だからって理由があったとしても、なんとなくいつも偉そうだし。
職場でもいつもスーツだから、今日のスーツ姿が特別気合いの入ったものにも思えない。
でも、休日にスーツって事は、それなりに気を使って来たんだろうし。
それなのに替え玉が来たってなれば、そういう気遣いも裏切ってしまったわけになる。