俺様上司と身代わり恋愛!?
だけど……と引っかかるのは、課長の外見のよさだ。
彫りの深い瞳にすっと通った鼻筋、薄い唇。
全体的に少し長めの黒髪に、何かスポーツでもやっているのか、細身でありながら筋肉のついたがっちりとした体型。
上背も170中盤から後半ある。
そんな見た目がいい課長が、たかがひとつのお見合いを楽しみにしていたとは到底思えない。
誰かと付き合いたいのなら、その辺を歩いていれば適当に捕まえられそうなものなのに。
そんな風に思いながら見ていると、課長は「いや。正直どうでもよかったけど」と、予想通り否定した。
「でも、私が来たことに文句ばっかり言うから、余程楽しみにしてたのかと思って」
「それは、社会人としておかしいことをやってるからだろ」
「じゃあ、お見合い自体は本当にどうでもいいんですか?」
「ああ。もともとこの見合いは笹川専務が強引に持ってきただけだし。
専務の顔が立たないとか言い出すから、断りきれなくて仕方なくな。仕事のうちだ」
面倒くさそうに言いながらコーヒーを飲む課長の年は、確か三十。
結婚適齢期と言えば言えない事もないけれど、お見合いを強引に勧められるような年でもないように思えたから、話を聞いて驚いた。
だって、三十なんて晩婚化や未婚率が叫ばれる今、独身だっておかしくない歳だ。
なのにお見合いさせられちゃうなんて……。
私も三十まで会社に残ってたら無理やりお見合い組まれちゃうんだろうか。
そう考えて、課長という役職を思い出す。
そういえば、ある程度の役職からは、既婚者が望まれるとかそういった噂を聞いた事があるけどあれって本当だったのかな。
だから課長は乗り気でもないお見合いを強引に受けさせられちゃったんだろうか。