俺様上司と身代わり恋愛!?


いくら態度の悪い後輩だとしても、落ち込んだ姿を見るのは面白くない……というか、嫌なものだなぁ、と今日の午後の事を振り返りながら、コーチャー日記をパタンと閉じ課長に提出する。

そして、はたっと気付いた。
課に、もう誰の姿もない。

課長を振り返ると、気付いた課長は「またおまえ待ち」と視線をコーチャー日記に向けたまま言った。

「すみません。課長、仕事早いですね。もう帰れるんですか?」
「俺は昨日遅くまで残業だったから今日は早く帰ろうと思ってたんだよ」
「それは……すみませんでした」

昨日、ノー残業デーだったのに課長は残業だったのかと思い、謝ってから帰り支度をする。

デスクの上を片づけて引き出しに鍵をかけてから、その鍵を課長に返すと、課長がそれを引き出しにしまい、また違った鍵を使い施錠する。

そしてその鍵を持ったまま、課から出て、意味のないゲートも施錠した。

一般職員のデスクの鍵は課長のデスクにしまうけれど、課長のデスクの鍵とゲートの鍵は、一階にある警備員室に預けるのが規則だ。

警備員室に預ける際には、基本的には管理職を証明するカードを見せる必要があるから鍵の受け渡しは管理職しかできない。
もちろん、警備員さんが顔で分かるようになれば顔パスでいけるらしいけれど。

でも、警備員をしているのは、早い話がこの会社を55歳で定年になった人たちだから、割と顔パスだらけだって課長が鍵を返しながら言っていた。


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