俺様上司と身代わり恋愛!?


「そういえば、サンウェルさん、大丈夫でしたか?」

半日ずっと気になっていた事を聞くと、課長は「あー……おまえもあの時いたんだっけ」と答えながら足を止め、そして社員用出入り口手前にある喫煙スペースを見る。

ガラスの壁に囲まれている喫煙スペースには、もう20時近いからか誰の姿もなかった。

「ちょっとそこで話すか。あんま大声でできる話でもねーし。……ああ、匂いが気になるなら、他の場所でも……」
「あ、大丈夫です」

付き合っていた人のなかに、喫煙者もいたし、部屋でもスパスパ吸われていたから今さら匂いは気にならない。

そんな風に気を遣ってくれたことが嬉しくて「ありがとうございます。課長、意外と気をきかせてくれるんですね」と言うと、呆れた顔をされた。

「こんなん普通だろ。どれだけ適当な扱い受けてきたんだよ。……まぁ、いい。この時間なら掃除もすんでるし、そこまで匂いも残ってないだろ」

うんざりとした表情で喫煙室に入っていく課長の後ろに続こうとすると、「羽織ってんのだけ外置いとけ」と言われ、素直に着ていたカーディガンを脱ぐ。

ブラウスは洗うからいいにしても、カーディガンは通勤で羽織るだけだから、毎日は洗わない。
だから気を遣ってくれたんだろう。

やっぱり課長は気が利く人だ。
そう確認しながら喫煙室の外にある椅子にそれを置いて、中に入った。

思っていたよりも重たいドアをガチャリと開けて入ると、中にはわずかに煙草の匂いが残っていた。

匂いの濃さ的には、カラオケだとか、そういう場所に近いかもしれない。



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