俺様上司と身代わり恋愛!?
それから歩いて向かった先は、予定通り山下公園だ。
目の前には既に海が広がっていて、突っ走りたい気持ちにはなったけれど、それを満腹のお腹が止める。
この公園が、ぐるっと回れるような造りになっているのは知っていたから、それを話すと、課長が「腹ごなしに一周歩くか」と言うからそれに頷いた。
公園に入ってすぐ左に曲がると、目の前には真っ直ぐに伸びた道が広がる。
道の左右にはたくさんの木が植えられていて、それがさわさわと風に揺れているのを見るだけでも癒されるようなそんな気がした。
少なくともオフィスに通う日常の中にはない景色だ。
気が張りつめていたとかそんな風に感じていたわけではないけれど、肩の力が抜けるような感覚がする。
課長も同じだろうかと気になって隣を見上げると、心なしか穏やかな横顔があってなんとなく嬉しくなる。
だから思わず笑みをこぼすと、目ざとい課長に「何笑ってんだ」とツッコまれた。
「いえ。実はここ、何度か来たことがあるんです」
「元彼がこの近くに住んでたんだろ? なら当たり前なんじゃねーの」
「いえ、ひとりで。本当は一緒に来たいなぁと思って毎回誘ったんですけどね、ひとりで行けって言われて……なので、たまにひとりでここ歩いてたんです。
葉っぱが緑色でも紅葉してても、散っていても、どんな花が咲いていても、ここ歩くと落ち着く気がしたんです。
だから、今課長がホッとした顔してたから、私の好きなモノを共感してもらえたみたいで嬉しかったんです」
そう説明し笑うと、課長はなんとも言えない顔をした後、「不憫すぎて答えに困る」と眉を寄せて笑う。