夜の図書室で
 生前のナナちゃんとなにか関係がありそうだ。


『星の王子さま』って、確か、砂漠に不時着した飛行機乗りが、星の王子さまと出会うんだよな。


 読んだのは何年前だろう。いつ読んだかも思いだせない。でも、読んだ記憶はある。


 おぼえているのは、わがままなバラと、あ、あとひとつ……、なんだっけ……。


「なんか、思いだせたかも……。飛び降りる前に、本返してないなーって思ったような……」


 僕が『星の王子さま』を思いだそうとしていたら、ナナちゃんが重要な記憶を思いだしていた。飛び降りる前、って。頭の中に浮かんでいたトゲのある赤いバラの花が、すぐに消えてなくなった。


「これ、どこにあったの?」


「え、掃除用具入れの裏に」


 そう、なんでかはわからないけど、掃除用具入れの裏と壁の間に挟まれていて、表紙も裏表紙もほこりまみれになっていた。
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