にゃおん、と鳴いてみよう
広がる別世界

あれ? 何だろう。この匂い。

最初に思ったのはそんなこと。
あんまり嗅いだ事のない匂いだったから。

それにあったかくて、ふわふわしている。
ママのぬくもりとは違うけど、これも悪くないわ。


そんなことを考えながらゆっくり目を開けると、世界はベツモノに変わってた。


最初に見えたのはダンボール。あたしの周り、どっちを向いてもそれが見える。
ああ、あたしが中に入っているのか。

のっかってるお布団はふわふわしてて白い。

ちょっと首をあげてみると、世界はもっと広がっていた。
サクラの色したカーテンと、白い天井が見える。

ダンボール箱から身を乗り出してみると、そこには『ゴハン屋敷』とは比べ物にならないほど片付いたお部屋が広がっていた。

香ばしいような匂いは、どこからしているんだろう。

あたしはもっと色々見たくて、ダンボール箱の中から飛び出そうと思った。

だけど、何だかあんまり力が入らないや。

一瞬起き上がれたけど、ずっとそのままではいられなくて、またパタンとうつぶせになる。
でも柔らかいお布団があったから、全然痛くはなかったけどね。


「あれ、起きたの?」


甲高い声がして、驚いて目だけで上を見た。奥の部屋からきれいな女の人が出てきた。
主さんとは比べ物にならないくらい若くって、テレビで見たアイドルの女の子に少し似てる。
うねった髪の毛がアゴのあたりで揺れててて、ネコ心をくすぐるその揺れっぷりに体がウズウズしてくる。

ああん、触りたいけど、そんなに動く元気もないみたい。
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