にゃおん、と鳴いてみよう

「お腹すいてるよね。あなたずーっと寝てたから、その間に色々買って来たんだよ。ほら、ネコ用ミルクもあるんでちゅよー」


赤ちゃんにでも話すみたいに、その人は言う。

失礼ね。あたしもう赤ちゃんじゃないのよ。ちゃんと何でも食べれるんだから。

とはいえ、いい匂い。ずーっと食べてないもん。お腹すいたなぁ。


「はい、どうぞ?」


優しい声で言われたら、何だか嬉しいかも。

ううん、でもでもダメ。
ニンゲンなんて、ちっとも優しくないもん。

でも……いいにおい。

やっぱりお腹は空いていて、強烈においしそうな匂いに抗うのは難しいみたい。

舐めてみようか。
変なもの入ってたらどうしよう。
でもこのままじゃあ、お腹がすきすぎて死んじゃうかもなぁ。
そしたら一緒かあ。

そう思って、一度ぺろりと舐めてみた。

舌に優しい甘味が伝わる。まろやかなのに、体を潤してくれるみたいな。

おいしい!
これはおいしいよ!

ぺろぺろ、ぺろぺろ。すぐにお皿の底がみえてくるくらい、いっぱい舐めた。一口食べるごとに、体に力が湧いてくるみたい。
ママのおっぱいに、負けないくらいおいしい。『ゴハン屋敷』の食べ物より、ずっとずっとおいしい!


< 16 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop