にゃおん、と鳴いてみよう

「良かったぁ。ちゃんと食べれるね」


女の人は、あたしのことをにこにこして見ている。


「うふふ。かわいいー。私、美音(みね)っていうの、よろしくね。あなたは何て名前なんだろう。捨てネコちゃんなのかな。あ、ここ、ペット禁止だから、静かにしてね。お願いよ?」


目がくりっとしていて、大人の女の人なのに、小さい子供みたいに興味津々にあたしに話しかけてくる。

なんか、ムズムズするわ。
ニンゲンなんてって思うけど、この人は優しそう?

それに、おいしいミルクをくれた。だからご挨拶くらいはしてもいいんじゃないかしら。

ミネちゃんね? わかったわ。あたしはチビよ。
あなたいい人そうだから、ニンゲンだけど仲良くしてもいいわよ?

ツンとすましてそう返事をしようと思った。

でも、何だか喉が詰まって、声が出ない。
にゃおんって言いたいのに、スカスカとしか音が出ない。

口をパクパクさせたあたしを見て、ミネちゃんのにこにこ顔が陰った。


「あれ? どうした?」


あたしはもう一度口パクパクする。
声がでないんだよう。


「そういえばずっと鳴かないよねぇ。喉を痛めちゃってるのかしら。時間のある時病院行こうかなぁ。
あ、そうだ。体拭かなきゃ。寝てたからお腹の辺りが拭けなかったの。嫌がらないでねー」


そう言ってミネちゃんはあたしを抱き上げる。
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