にゃおん、と鳴いてみよう

「ほら、見てごらーん。可愛いよ」


あたしは目をぱちくりさせちゃった。
そこにうつっていたのは、前みたいにツヤツヤの毛並みに戻ったあたし。
赤いリボンが黒に映えて、可愛さが増したような気もするわ?

しっぽがぴょんと立ち上がる。心がウズウズしてきた。

これ、可愛いかも。
あたしに似合うかも。

うん、なんかすっごく、気に入ったわ。


「うふふ。じゃあモカちゃん。しばらくよろしくね? 実はね、元気になるまでこっそりうちに置いちゃおうって思って、色々買ってきちゃったんだ」


ミネちゃんはノリノリで、袋から色々出してきた。


「これはトイレの砂でしょ? これは遊び道具。これはね、キャットフード。もう食べれるかなぁ」


あたしは、ミネちゃんの出したねずみのぬいぐるみみたいなのが気になって、捕まえようとした。手を出すとするりと抜けていくそいつ。

待て待て。ああん、捕まえられない。興奮していつの間にか尻尾が立っちゃった。


「あはは。気に入ってくれたのね?」


そう言ってミネちゃんが笑うから、あたしもなんだか嬉しくなった。


 その日、窓から見えたお月さまは、何だか素知らぬ振りをしているように見えたから、ママの事はなるべく考えないようにした。

そうしてあたしは、久しぶりに落ち着いた気分で眠りについた。

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