にゃおん、と鳴いてみよう
外の世界

 ミネちゃんのお仕事が休みの日、あたしは蓋つきのカゴバックってやつにポトンと入れられて、お外へ連れて行かれた。
 久しぶりのお外の匂いに、あたしのおひげがぴくぴく動く。


本当なら、今がチャンスなんだよね。
ママを探しに行くには、お外に出られたときに逃げなきゃ。

なのに、あたしはなんでか大人しくカゴの中で揺られている。

これはあれよ。まだ調子がよくないから。だからじっとしてるのよ。
わざとプイッとして、言い訳してみたりする。


そうしているうちに、何だか騒がしいところに連れて来られちゃった。


「実は捨てられてたネコちゃんなんですが」


ミネちゃんが誰かに言ってるけど、かごバックの隙間からじゃよく分からない。

捨てられたネコって、あたしのことかな。
でもあたし、捨てられたんじゃないのよ。
ママがそんなことするはずないもん。きっとあたしのこと、探してるもの。


 やがて、カゴの蓋がパカッと開いた。すぐに見えたのはミネちゃんのにっこり顔。ミネちゃんは、可愛い顔に似合わないしっかりした力であたしを抑えながら、ひざの上にのせてくれた。


「ここは病院だから、静かにしててね? ……って言っても今は鳴けないんだったね」


人と動物がいっぱいいた。犬やネコ、鳥なんかも。まるで鳴き声で合唱しているみたい。
みんな、飼い主さんの隣で、かごやケージに入れられている。

奥の方には、動物だけがケージに入って一杯いる。なんかここ、不思議だなぁ。
他のネコに色々聞いてみたいけど、今は声が出ないからそれも出来ないや。

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