にゃおん、と鳴いてみよう

 次にミネちゃんのお仕事がお休みの日。

昼間、ミネちゃんとお散歩に行って、すっごい長い距離を追いかけっこした。帰ってきたらもうヘトヘトで、疲れてお昼寝しちゃった時のこと。

ドアのベルが何度も鳴らされて、先に気づいたあたしが、玄関に様子を見にいった。


「にゃーにゃー」


あのね、ミネちゃん寝てるの。また後で来てくれないかしら。

疲れてるから起こさないで、って伝えたくて鳴いてみたんだけど、ベルは一向に止まらなくて。
ついに目覚めたミネちゃんが、あたしを奥のお部屋に連れ戻してから、ドアを開けた。


「山下さん、これはどういうことかしら」

「あ、管理人さん。……え?」

「お宅からネコの鳴き声がするって苦情が入ってます。ええ、先ほど自分でも確認しましたわ?」

「……あ」


おばさんは止めるミネちゃんを振り切って中にはいってきて、あたしを見つけて金切り声をあげた。

ミネちゃんはそのおばさんと話終えると、あたしの寝床の前で泣きじゃくった。

あたしは、その時は意味が分からなくて、ミネちゃんを慰めようと、何度も何度もその足を舐めた。


それが、あたしたちの生活の終わりの合図だったんだと知ったのは、数日後、病院にむかったときだ。

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