未熟女でも大人になっていいですか?
「望さんのお父さん、私を見て何と言うかしら」


「『物好きな女だな』って笑うだろうな」


清々しい顔をしてサラリと言う台詞か。


「まあいつも通りでいろよ。カツラなら間違いなく気に入られるから」


また『いつも通り』と言われる。

それが一番不可解なのに。


「もういい。諦めとく」


深く考えるのは止そう。

ご両親に愛されなくても、高島に愛されるならそれでいい。




帰路の高速道路は思っていた以上に空いていた。

日曜の朝ということもあり、大型トラックも走っていない。


時折サービスエリアに寄って休んだ。

退屈だからと言って運転を交互に替わった。

刻一刻と近づく高島の実家に心臓の音は速さを増していく。

手に汗を握りしめ、緊張しながらその時を待った。




「次のインターで下りるぞ」


いよいよ時がやって来る。

覚悟を決めなくては。



「ねぇ、今更だけど本当に手土産は良かったの?」


「そんな物無くても気にしねぇよ、うちの親は」


親不孝者の言葉は疑わしい。

それに後悔しつつ窓の外を見やった。


山には緑の木々が生い茂っていた。

初夏の色合いで染まり、まるで夏景色のようにも見える。



「綺麗な所ね」


「だから永住してるんだと」


田舎好きなんだ…と呆れる。

自由が好きだと言う男はどうやら田舎が嫌いらしい。


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