未熟女でも大人になっていいですか?
輪の中に溶け込んで
ドアを開けた瞬間、鳴り響くカウベル。

ふんわりと暖かい雰囲気の店内には、明るめのオルゴール曲が流れていた。

窓枠と同じ色調に塗られた床の上にはクリーム色したテーブルセット、窓には淡いサーモンピンクのカーテンがたっぷりとしたドレープを引いて掛かり、何処となくロマンチックな演出がされている。



(素敵なお店…)


第一印象がとにかく素晴らしい。

おかげでぼぅっと見入ってしまった。



「カツラ」


名前を呼ばれて我に返る。

何気なく目線を向けると高島の口が開いた。



「親父とお袋」


ハッとして前を向くと、壮年層の男女が見える。

呆気にとられた顔つきでじぃっとこちらを見ていた。



「は……初めまして。仙道 藤と申します!!」


思わず力んでしまった。

高島によく似た男性が、声も出さずに会釈をくれる。


「初めまして仙道さん。望の母の八重子(やえこ)です」


細面の顔をした女性は優しそうに微笑みながら寄ってきた。


「こっちは父親の孝介(こうすけ)」


改まって紹介してくれる人に恐縮しつつ一礼した。


「婆ちゃんは?」


帰省の挨拶をする訳でもなく、高島は奥へと視線を逸らす。



「帰って来るなり婆さんの心配か」


お父さんは呆れる。


「お婆ちゃんなら家の中にいるわ。後から会いに行ってやって。望に会えるよって伝えているから」


お母さんはそう言うと私達を窓辺の席に案内した。


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