未熟女でも大人になっていいですか？

やれ困った。

本人の色の好みも知らない。


「や…やっぱり今日は止します！また来ますので！」


とっとと退散。

それが手っ取り早くていい。





「はぁ〜〜……」


足場の上で溜息をつく。

休日の明けた月曜日、そろそろあの喧しい女が通る頃だ。




（……あっ！来たっ！）


ペンキを付けてしまった翌日から彼女が着ているコートの色は変わった。


初めて会った時は美しい藤色のコートを着ていた。

でも、この最近は似合いもしないグレー。

仏頂面を引っさげて、今日も足場の下を通り抜けようとした。



「あ、あの！」


思いきって呼び止めた。


「何ですか！？」


機嫌悪そうに振り返る。

僕だと思わなかったみたいで、見た瞬間目の色が変わった。


「新しいコート買えたの！？」


期待に胸を膨らませたところを誠に申し訳ないと思いつつ謝った。



「すみません。まだです」


答えを聞いて項垂れる。

どうやらこの女は真剣に新しい物が欲しいらしい。




「あの……僕、お願いがありまして……」


「はっ？何よ？」


泣きそうな顔をしながら聞き返さないで欲しい。


「あの…実はコートを選びには行ったんですが、貴女が何色がお好きかも知らないし、サイズも何号か分からなくて弱りました。

それから、香水のきつい……いえ、売り場の女性達も苦手で……できれば貴女の服なんですから、ご一緒に選んでいただいてはどうかと思うんですけど如何でしょう？」