未熟女でも大人になっていいですか?
「何色にしようかな~」


さっきから一体何度同じ台詞を聞いただろうか。

ぐるぐるといろんな店を回る度にこの女は迷っている。


「う~ん、悩む」


(悩まないで早く決めてくれよ。こっちは慣れない環境の中、堪え忍んでいるんだから)


自分のミスが原因とは言え恥ずかしい。

婦人服売場に不似合いな僕の存在は、否応なしに目立ってしまう。



「あの…、お一人様ですか?」


「いえ、連れがいます!」


慌てて否定しては背中に冷や汗をかく。

またしても女性に声を掛けられた。

さっきから何人目だろうか。


「ちょっと船頭さん、一緒に考えてよ!」


(船頭じゃない。仙道だ!)


心の中で言い返して側へ寄る。


「はい、何色がいいかを選べばいいんですね」


カチャカチャとハンガーを触りながら探すフリをする。


「そうよ。私に似合いそうな色を探して!」


「は、はい!」


返事だけは立派にしておこう。

どうせまともには選べないんだから。



「綺麗な色ないなー」


隣に立つ女は真剣そのもの。

たかがコート一枚くらいで、そこまで力を注がなくてもいいじゃないか。


真っ直ぐな髪質の女『ヤマガタ ミツ』は、小一時間近く悩んだところでやっと二択にまで絞り混んだ。


「さっきの店の薄桃色か、この店の菫色かのどちらかにする!ねぇ、どっちの方が似合うと思う?」


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